この人も好きだった「こどものとも」

幼少時代と大人になってからの『ぐりとぐら』

ぐりとぐら_小林顕作さん

37才の時に、自分が「オフロスキー」というNHKのキャラクターとして活動する事になり、それまで行っていた俳優としての仕事の中にどこか「子ども向け」のものが増えていきました。それはそれでとてもありがたい事だったのですが、果たして自分が「子ども向け」であるのかというと、そこはかなりその、オフロスキーのキャラクターをご存知の方は思うと思いますが、「向け」ではないなと。

ずっと小劇場というキテレツなフィールドに立っていたので、「向け」というよりは「まんま」その場に居るという、「はーい!よい子のみんなー!」などとは決して言わぬ存在として、「まんま」「子ども向け」の仕事をしているわけです。

そんな僕は幼少の頃、ほとんど絵本なんか読みませんでした。記憶にあるのは『ちからたろう』(ポプラ社刊)の話くらい。じーさんとばーさんが子どもが欲しくて、体からでるあかでこさえた人形が大きくなって色々助けてくれるという「え? あかで? んなわけないじゃーん!」とおどろかされた絵本です。

あと、絵で印象に残ってるのが『ぐりとぐら』。「パンケーキ(カステラ)、うまそうだなあ」くらい。絵本なんか読まないでドロケイとか野球ばっかりしてたんですもん。なんとも普通です。

そのくらいの印象しか残ってないまま、40才も過ぎた頃に「小林さん、子ども向けに読みきかせしてもらえませんか?」って仕事をいただきまして。そこで再び出会ったのが『ちからたろう』ではなく、『ぐりとぐら』でした。

「あ、今でもスタンダードに人気あるんだー、スゲーなー」と思いながら、いざ子どもたちの前で絵本の読みきかせをするにあたり、「待てよ、このぐりとぐらって、どんなキャラクター設定なんだろう」という思いがよぎり、「多分、服が青と赤に分けられているだけで、そっくりな双子かな? そして、坦々としてポジティブな働きもの、そんなところか」と分析して読んでみようかと決めかけた時、「待てよ、読む時に思い切って全く違うキャラクターにしてみたら、どうなるんだろう?」という発想に至り、結果、ぐりを若いダミ声、ぐらを太ったお相撲さん風に変えてみたのです。

子どもたちの前で読んでみたら、大爆笑でした。『ぐりとぐら』という不変的な人気絵本が、ダミ声の若者と太ったお相撲さん風のネズミたちによる森の中の珍道中というなんともヘンテコな世界へと大変身したのです。物語の最後に「たまごのからは何になったのでしょーか?せーの!」と声をかけると、子どもたちから、正解ではないメチャクチャな答えがとんできます。あの瞬間って、幸せですね。

幼少時代全く絵本を読まなかった僕が、現在こんな形で絵本と深く関わっているなんて、なんとも不思議な感覚です。

小林顕作(C)HARU小林顕作(こばやし けんさく)
劇団「宇宙レコード」主宰。(「レ」の文字を丸で囲むのが正式の表記。)作・演出・出演すべて担当。ダンスカンパニー、コンドルズ作品中のコント脚本を担当。TV出演・客演多数。演出家としても活躍。ラジオ、TVのCMのナレーションも行う。
現在、NHK Eテレ「みいつけた!」にオフロスキー役で出演中。(写真©HARU)