あの年に生まれた「こどものとも」

1992年 雪国に春の訪れフクジュソウ『いいことってどんなこと?』

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3月号で刊行された『いいことってどんなこと?』は早春、北の国が舞台です。一面の雪野原が広がる外を窓から眺めながら、女の子は、軒下に落ちる雪どけ水のしずくにたずねます。「しずくさん、しずくさん、どうしてそんなにうれしいの」しずくは答えます。「いいことがあるからよ。いいことがあるからよ」「いいことってどんなことかしら」と思いながら女の子は外へ出て、小鳥たちに、川の流れに、春の風に、そしてリスたちに同じようにたずねます。でもみんな「いいことがあるからよ」としか教えてくれません。DSCF4625

「いいことってどんなことかしら」女の子はリスを追いかけていきますがころんでしまいます。「みんな自分ばっかりうれしそうにして……」——その時、雪の下からかすかな水音が聞こえ、そこの雪を掘ると金色に輝く花が咲いていたのでした。女の子は胸をはずませます。私も「いいこと みつけた」と。

金色に輝く花は、作者の神沢利子さんが幼いころ住んでいた樺太で見つけたフクジュソウがモデルです。白い雪をかきだして、友だちと競ってさぐりあてたフクジュソウは、まるで金色に輝いているように見え、その感動がこの作品が生まれたきっかけとなりました。

しかし、雪国出身でも神沢さんと同じような記憶を持つ人がなかなかいなかったため「この記憶を絵本のお話として書くことはできないのかしら。」とずっと思っていました。けれども、その金色に輝く花の記憶が神沢さんの中で、年々鮮やかに色濃くなり、ついにお話を書いてみることにしました。

この作品ができてから、絵をてがけた片山健さんと、北海道の旭川郊外を訪れ、そのように咲くフクジュソウを探しにでかけました。神沢利子さんは雪の上に寝そべって黄色く輝く花を見つめ、画家の片山さんは、早春の寒さの中を座り、長いことスケッチをされていたそうです。

神沢さんの幼いころの感動をそのまま絵本に封じ込めた『いいことってどんなこと?』は春を待つ子どものわくわくする気持ちをみごとに表現し、子どもたちの心をつかみました。DSCF4627

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