あの年に生まれた「こどものとも」

1993年 動物と生きる子どもたちに寄り添う『いつも いっしょ――どうぶつとくらす アジアのこどもたち』

いつもいっしょ表紙1993年度には、子どもと動物との深い絆を感じさせる写真絵本、『いつも いっしょ――どうぶつとくらす アジアのこどもたち』(2月号)が刊行されました。アジア各国が急成長を遂げつつあった時代ですが、写真におさめられているのは、いつの日も変わらない子どもたちの日常生活です。

ひよこに餌をやる幼い少女、子羊と戯れる子どもたち、犬とおつかいに行く少年。子どもと動物との親密な様子を捉えた写真は、ほほえましいものばかり。とはいえ、写されている動物たちは、ただかわいがるためだけの存在ではありません。ヤギや水牛、羊、馬など、農耕生活に欠かせない家畜たちとの支えあう関係、そしてそこに生まれる深い絆が、写真の中に捉えられています。

いつもいっしょ見開きこの絵本は、「暮らしの中の動物」というテーマで行われた、第16回 ユネスコ・アジア太平洋写真コンテストの応募作品から、子どもと動物が写っているものを選んで1冊にまとめ、松岡享子さんが言葉をそえたものです。松岡さんは、撮影された写真のすばらしさに感動し、「何をいっても『いわずもがな』という気がしてくる」と語っていますが、これらの写真が持つ臨場感は、撮影者と被写体の近しさから生まれたものでした。それぞれの撮影者から寄せられた手紙には、被写体となった子どもや動物の名前、彼らの普段の生活、そして撮影時の状況などが、事細かにつづられていたのです。彼らの日常生活を実際に見ているかのように感じられる写真は、撮影者が被写体の日常に溶け込む形で撮影を行うことで生まれたのでした。

このようにして撮影された、まるで自ら語りかけてくるかのような写真を前に、言葉をつけることへの苦労を語っていた松岡さんですが、その素朴で力強い言葉は、動物とともに生きる子どもたちの日常や感性を、より生き生きと浮かび上がらせています。「フチテは ぼくのうまで ぼくは フチテのにんげんだ」という一文は、馬と少年を写した一枚に寄せられたものですが、人間と動物を対等な存在として捉えてともに生きる、その土地の生活に根ざした感覚を、純粋な形ですくい上げているように感じられるのです。

1993年の三冊

1993年には他にも、林明子さんによる『まほうのえのぐ』(4月号)、長新太さんのナンセンス絵本『なんじゃもんじゃ博士のおべんとう』、長谷川摂子さんと吉田道子さんが手がけた『どてのしたてやさん』(6月号)などが刊行されています。

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