あの年に生まれた「こどものとも」

1976年 谷川俊太郎、和田誠が「こどものとも」に初登場 『あな』

1詩人の谷川俊太郎さんと、イラストレーターの和田誠さんが「こどものとも」に初登場したのが1976年11月号でした。作品は主人公の男の子・ひろしが自分だけの「穴」を掘る絵本『あな』です。横長の本を縦にひらくつくりが特徴的で、当時は斬新なデザインでした。

2『あな』は、日曜日の朝に何もすることがなかったひろしが自分だけの穴を掘りはじめる、という場面からはじまります。
穴を掘りはじめたひろしは、妹に「あたしにも掘らせて」といわれても「だめ」。友だちが「何にするんだい」と聞いたら、「さあね」と答えます。お母さん、お父さんに話しかけられてもおなじ調子です。穴はどんどん深くなり、穴の底からいもむしがはいだしてきました。いもむしに出会うと、ひろしは穴を掘るのをやめ、穴の底に座りこみます。そこでひろしは「これは僕の穴だ」と思うのでした……。そして最後には、自ら穴を埋めてしまいます。

3男の子が穴を掘り、満足して穴を埋める。簡単に要約してしまえばこのようにとても単純なお話のように思えます。しかし、ひろしのひとつひとつの動きを追いながら読み進めてみると、子どもから大人までみんなに共通する心理があることに気づくでしょう。
谷川さんは当時、『あな』についてこんなふうにおっしゃっています。
「この本の主題はいってみりゃ、人間の孤独ってことだろうと思うんだな。ひろしはだれにも手伝ってほしくないし、穴を何かの目的に使うのもいやなんだ。しかも何故そうなのか自分でも説明できない。(中略)誰にでも、自分に似せて自分の穴を掘ることはあると思う、そしてしばらくの間、ひとから離れてそこへかくれていたいって気持ちもね。おとなにそういう心理があるんなら、子どもにだって似たような心理はあるんじゃないかしら」

この年には他に、独り立ちしようとする子スズメの冒険を描いた『こすずめのぼうけん』(4月号)や、「ぐりとぐら」シリーズの夏のお話『ぐりとぐらのかいすいよく』(8月号)などが刊行されました。4

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