あの年に生まれた「こどものとも」

1971年 朝ごはんから始まるのどかな冒険のお話 『ゆうこのあさごはん』

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「ぐりとぐら」シリーズや童話『いやいやえん』の絵でおなじみの山脇百合子さん。その絵の印象がつよいために、お話を書かれるイメージがあまりない方もいるかもしれません。この年の「こどものとも」からは、山脇さんがお話と絵の両方を手がけた絵本が初めて登場しました。それが『ゆうこのあさごはん』(1971年10月号)です。

寝ぼうしたゆうこの朝ごはんは、バターのついたパンと牛乳とチーズ、それから顔がかいてあるゆで卵です。お母さんは洗濯で忙しく、ゆうこに「ひとりでじょうずにたべるのですよ」といってダイニングからいなくなってしまいます。すると、ゆで卵が「ぼくをたべないでよ。……ふたりでぼうけんにいこうよ」と語りかけてきます。冒険にいくことに決めたゆうこに、ゆで卵は小指に塩をつけてなめると身体がたまごくらいに小さくなるというふしぎな魔法を教えてくれました。その魔法の名前は「びゆことおし」。ふたりはいっしょに庭におり、クヌギの木に登ってスズメのように空を飛んでみます。

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この、のどかな冒険のお話は、当時3才だった山脇さんの娘さんの朝食の光景から着想を得てつくられました。「いただきます」から「ごちそうさま」まで、朝食から広がる子どもの想像の世界を山脇さんならではの発想から、愉快にのびのびと描きだしています。
卵と一緒に空を飛んだり、サルビアの茎をつえにして坂道をのぼるようにクヌギの木を登ったりなど、常識にしばられた頭ではとても思いつかないようなおもしろい発想を、子どもが自然と受け入れられるように表現できるのも山脇さんならではです。
身体が小さくなる魔法のことば「びゆことおし」、お話の最後にゆうこが元の身体の大きさに戻るためのことば「びゆやおとおし」。これらも一見でたらめのように思えますが、さかさから読んでみると……思わずくすりとしてしまうしかけが隠されています。子どもたちは山脇さんののんびりとしたことばと、優しい絵に親しみをおぼえ、安心してゆうこと一緒に冒険を楽しむことができるでしょう。

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「ゆうこ」の物語はのちに2作目の『ゆうこのキャベツぼうし』(1997年4月号)が出ることになります。どちらもハードカバーの単行本として、現在も手に取ることができる絵本です。

1971年は他に、安野光雅さんによる「ふしぎなえ」のシリーズ第3弾『ふしぎな さーかす』も刊行された年でした。

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