あの年に生まれた「こどものとも」

1989年 いいか、むねを張れ。空を見るんだ 『とべ! ちいさいプロペラき』

1989_01昭和が終わり、平成がはじまった1989年の1冊としてご紹介するのは、4月号として刊行された『とべ! ちいさいプロペラき』です。

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ちいさいプロペラ機は、新しくて翼も胴体もぴかぴかでした。けれど、まだ空を飛んだことはありません。格納庫の中で、はじめて空に飛び立つ日を待っていました。ある日のこと、遠い外国からやってきたジェット機を見て、「なんて すごいんだろう」と、ちいさいプロペラ機は、すっかり感心してしまいました。次の朝、パイロットのおじさんがエンジンのスイッチをいれ、飛び立つ準備をはじめたプロペラ機。プルン プルルン プルン プルルンとエンジンが調子よく回り始めましたが、大きなジェット機に見られていることで、委縮してしまったのか、結局その日は飛び立つことができませんでした。

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その夜、格納庫の中で、「まず、空を飛んでごらん。そうすれば、きっとぼくらの大きさのことなど忘れてしまうよ」とジャンボ機に励まされたプロペラ機。心細い気持を振り切って、ちいさなプロペラ機は、大空に飛び出していけるのでしょうか……?1989_04

4月号が実際に刊行されるのは、3月の初旬です。3月から4月にかけては、入園や進級の時期に重なります。あたらしい生活を前にして期待に胸をふくらませている子どもたちの中にも、少し不安な気持ちでいる子もいることでしょう。そんな子どもたちの心に寄り添い、あたたかく励ましてくれる本作の主人公は、文章を書いた小風さちさんが、永年住み慣れたイギリスをあとにする日に飛行場で見かけたプロペラ機がモデルになっています。10年ほど暮らしていたイギリスから帰国する際、当時は直行便がなかったので、小風さんはオランダのスキポール空港で乗り継ぎをしました。そこで、大きなジェット機に1機のプロペラ機がまじっているのを目にした小風さん、そのプロペラ機がプルプルと加速して飛び立っていった光景がずっと心の中にあったといいます。それまでにも、月刊誌「母の友」の誌上で、作品を発表していた小風さんですが、絵本の文章を書いたのは、本作がはじめてでした。絵は、乗り物絵本の第一人者、山本忠敬さんです。山本さんの描くプロペラ機やジェット機は、擬人化しようと目や口を書き加えることはなくとも、不安な気持ちや、空を飛んで誇らしい気持ちなど、表情豊かに描かれています。

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