あの年に生まれた「こどものとも」

1987年 障がいを持つお父さんと男の子のある日の朝『おとうさんといっしょに』

1987_01  保育園に通うあきくんは、いつもはお母さんといっしょに自転車で登園しています。でも今日は、用事があってお母さんはいません。代わりにお父さんといっしょに行くことになりました。お父さんは、脳性小児まひという障がいをもっているため、体をうまく動かせません。だから、あきくんの着替えを手伝うのもなかなか思うようにいきません。お母さんが作っておいてくれた朝ごはんを食べて、家を出るふたり。電動車いすに乗るお父さんの膝の上にあきくんが乗って、保育園を目指します。はじめて電動車いすに乗るあきくんは、心配そうな顔。一度はお母さんと自転車で行きたいとべそをかいたあきくんですが、坂道では「がんばれ がんばれ くるまいす」とお父さんを応援します。さあ、あと少しで保育園です……。1987_02

バリアフリーということばが広く知られるようになったのは、1970年代後半ですが、この絵本が刊行された1987年は、公共施設のバリアフリー化は今ほどまだ進んでいませんでした。今では設置が進んでいるエレベーターも、絵本に出てくる駅にはないため、お父さんとあきくんは、南口から北口に出るために、暗い地下道を下ってから、また登らなければなりませんでした。それは、電動車いすで生活をするお父さんには、とても大変なこと。朝おきてから、登園するまでの短い時間であっても、障がいのあるお父さんと、あきくんにとっては、冒険のように思えたかもしれません。1987_03

この絵本の文章をかいたのは、ご自身も脳性まひという障がいをもって生まれた白石清春さんです。あきくんは、そのご子息。つまり、この絵本は、白石さんがご自身の日常をかいた絵本なのです。福島生まれの白石さんは、県立の養護学校高等部を卒業後、障がい者の社会参加をめざす活動を活発に行い、秋田、神奈川と移り住む中で、各地でさまざまな団体を発足。現在は、福島に戻り、2011年の東日本大震災後は、「被災地障がい者支援センターふくしま」の代表として活動されています。1987_04

1987年は他にも、手長うさぎのくるりくらが登場する『ぐりとぐらとくるりくら』や、農村に暮らす子どもたちを描いた菊池日出夫さんの『のらっこ』などが刊行されました。

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