あの年に生まれた「こどものとも」

1983年 昔話の主人公が「ぼうし」をかぶったら……『ぼうし』

ぼうし表紙
『きつねのよめいり』(1960年8月)で「こどものとも」にデビューし、むかしばなしの絵も多く手がけた瀬川康男さん。そんな瀬川さんによって1983年に刊行されたのは、むかしばなしの主人公たちが登場するふしぎな絵本、『ぼうし』(1983年6月号)でした。

ぼうし見開き

ももたろう、きんたろう、べんけいなど、誰もが知っている人物たちが、それぞれ勇ましく身支度をし、キリリとはちまきをしめると、最後になぜか大きな麦わら帽子をかぶって顔をすっかり隠してしまいます。「あなた いつまで かぶっているの」と問われると、ももたろうは「おにたいじまで」、きんたろうは「すもうで くまを まかすまで」、べんけいは「しんでも ぼうしを かぶっています」と答えます。人物たちがこちらを見据えながらりりしく身支度をする場面と、それまでと同じ構図で突然麦わら帽子をすっぽりとかぶってしまう場面との落差、そして「あなた いつまで かぶっているの」と繰り返される問いかけがおもしろい作品です。

ぼうし表紙2

この作品は、瀬川さんが近所の子どもたちと遊んでいる中から生まれました。やんちゃな子どもたちともみくちゃになって遊んでいると、そのうちのひとりが瀬川さんに帽子をかぶせ、「いつまで かぶっているの」とからかいます。ついには犬にまで帽子をかぶせてしまったそうですが、『ぼうし』の最後に登場する「みほちゃん」と犬の「しろくん」との、帽子をかぶせたりかぶったりしながらのほほえましいやりとりは、ここから生まれたのでしょうか。1987年には、加筆、版型の変更がなされた上で単行本として出版され、第10回絵本にっぽん賞を受賞しました。

1983s

同じ1983年には、堀内誠一さんによる『たろうのひっこし』(4月号)、林明子さんの『いってらっしゃーい いってきまーす』(7月号)、そして加古里子さんの『だるまちゃんととらのこちゃん』(2月号)が刊行されています。

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