あの年に生まれた「こどものとも」

1974年 助けあう楽しさを子どもたちへ『あらいぐまとねずみたち』

こぐまを主人公に幼児の生活の一端を楽しく描いた『どうすればいいのかな?』などのくまくんの絵本シリーズや、電車好きな子どもたちを惹きつけてやまない『いちばんでんしゃの しゃしょうさん』で知られる大友康夫さんが、はじめて手がけた絵本は、1974年4月号として刊行された『あらいぐまとねずみたち』です。

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家を何者かに荒されたあらいぐまの親子が、こぼれた豆のあとを追って森をぬけ、丘をこえ、草原までたどり着くと、遊んでいるたくさんのねずみたちを見つけます。そこには、盗まれた豆の袋と、前になくなった絵本やおもちゃのヨット、お父さんのめがねやお母さんの毛糸もあるではありませんか! 腹をたてたあらいぐまの親子はねずみたちを追いかけて、懲らしめます。すると、1匹のこねずみが盗んだものを全部返してしまったら食べるものがなくなってしまうと泣き声で言うのです。それを聞いた、あらいぐまの親子は困ってしまいます。しばらく考えて、あらいぐまのお母さんがいいことを思いつきます。それは、畑に種芋を植えて、じゃがいもを栽培することと、ねずみたちの家を建てることです。そこで、あらいぐまとねずみたちは、力をあわせて働きます。できあがった家のすてきなことといったら!

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その家の中で、ねずみたちが楽しんでいる絵本は、大友さんが絵本作家をめざすきっかけとなった『ぐりとぐら』です。ある日、保育園から帰ってきたお子さんが『ぐりとぐら』を読んでいて、大友さん自身がお子さんそっちのけでのめり込んだといいます。そんなわが子とすごす何気ない毎日の中で、「正しいことを正しいとして貫く」生き方があることに気がついたという大友さん。それまでの世渡り的な生き方を改め、本当に生きてやろうと、中学生のとき好きだった絵を勉強して絵本を作ってみようと思いたちます。それから、セツ・モードセミナーという美術学校に通い、絵を学びますが、それだけでは仕事はもらえないので、出版社に持ち込みをします。断られても、何回も何回も会いに行き、3年もの間通い続けた大友さん。その結果生まれたのが『あらいぐまとねずみたち』なのです。

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この絵本は、ページの隅々までじっくり見ると、楽しさが倍増します。できあがった家の中には、絵本を楽しむほかにも、食事をしたり、お風呂に入るねずみたちの姿が……。家と畑を手に入れたねずみたちは、丹精こめて畑を手入れし、あらいぐまの親子に、じゃがいもをお礼に届けるのです。このハッピーエンドのお話には、助けあう楽しさが描かれていて、それこそが子どもたちに大友さんがいちばん伝えたかったことなのです。

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また、同年10月号には、大友さんとセツ・モードセミナー仲間の西村繁男さんの共著『くずのはやまのきつね』を刊行しました。

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