あの年に生まれた「こどものとも」

1967年 絵本を通して遠い異国を伝える『プンク マインチャ』

日本国内の航空会社が、アジアの航空会社として初めて世界一周線を開始して、物理的に世界への距離も近くなったこの年、当時ほとんど日本では知られていなかったネパールを舞台にしたお話、『プンク マインチャ』が、秋野亥左牟さんの絵と、大塚勇三さんの再話で刊行されました。

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心やさしい女の子、「プンク マインチャ」は継母に育てられていますが、食べ物も与えられず、ひもじい思いをしています。ある日プンクは、きつねとやぎのふたつの頭がついているドーン・チョレーチャというやぎと出会います。やぎは不思議な力で食べ物を出現させ、ひもじいプンクをかわいがりますが、それが継母の知るところとなり、ドーン・チョレーチャは最後の言葉をプンクに残して、殺されてしまいます。

その言葉に従い宝物を手に入れたプンクを妬んだ継母が、今度は自分の娘チャンパにも宝物をとってこさせようと画策しますが、鬼にとらえられたチャンパの最後が、からすによって継母に知らされるのでした……

絵と物語の採取を手がけた秋野亥左牟さんは、画家・秋野不矩さんの息子さんで、この本が出る5年ほど前から、インドの大学に客員教授として招かれた不矩さんと一緒にインドに滞在していました。

現地で、あちこちを一人で歩いていた亥左牟さんは、ネパールに滞在した際、少数民族のネワール族の文化に触れ、プンクマインチャのお話(原題「ドーン・チョレーチャ」)を聞いたそうです。この物語をはじめ、ネワールの長い歴史を内に織り込んだ神話は、神について語ることは民族の魂を語り継ぐことでもあるという考えのもと、いまだかつて文字におこされることなく、すべて語り継がれてきたものでした。

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秋野亥左牟さんも、日本語が上手だった語り手の老婆の息子さんからネワール語、英語、日本語を交えて聞いたものを書き取り、物語を採取しました。秋野さんは、ネワールの物語は語られる中にこそ生きているのだから、物語を文字にすることで、その物語の魂が逃げてしまうのではないかと悩んだそうです。けれども、物語に宿るネワールの魂を通して、人間の美しく、弱く、強い部分を、日本の子どもたちにも絵本を通して見つめてほしいという強い思いがあり、このお話を絵本にすることにしたそうです。さらに、秋野さんがネパールの生の雰囲気を伝えようと魂を込めて描いたエキゾチックで迫力のある絵が、子どもたちに見たことのない世界を伝えたのでした。blog_2

1967年は、以後昆虫絵本の第一人者になる得田之久さんによる『かまきりのちょん』(1967年8月号)、独特の世界観で作品を数多く手がけられる安野光雅さんの『ふしぎなえ』(1968年3月号)など、「こどものとも」のバラエティ豊かなラインナップをさらに充実させるお二人の初めての作品が発表されました。blog_punk

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