あの年に生まれた「こどものとも」

1973年 ひとりぽっちでも、自分のままで生きていく『やっぱり おおかみ』

やっぱりおおかみ表紙

『ノストラダムスの大予言』がベストセラーとなって世間を騒がせた1973年。すでに前衛的な漫画家として活躍していた佐々木マキさんが、『やっぱり おおかみ』(1973年10月号)で「こどものとも」デビューを飾りました。

ひとりぽっちのこどものおおかみは、「どこかに だれか いないかな」と、仲間を探して街をうろつきます。うさぎ、やぎ、ぶた、しか、うし……、おおかみを見ると立ち去っていく動物たちに「け」と言い捨てては、「おれに にたこは いないかな」とまた歩き出します。みんな仲間がいてたのしそうですが、どんなに探してもおおかみに似た子ひとりもいません。夜になって墓地に現れたおばけたちですら、仲間と一緒なのに。ですが、たった一つで空に飛んでいく気球を見て、おおかみは思います。「やっぱり おれは おおかみだもんな おおかみとして いきるしかないよ」。小さくなっていく気球に、「け」とつぶやくおおかみですが、そう思うとなんだか愉快な気持ちになってくるのでした。

やっぱりおおかみ見開き

コマ割り、吹き出しなど、マンガの手法を取り入れた斬新な画面には、くすんだ色合いで細部まで描きこまれた動物たちや街並み。『やっぱり おおかみ』では、文章による状況説明ではなく、絵によって物語を展開させていく手法がとられていますが、それを補強するのがコマ割りです。街並みを広角で捉えた見開き全体に広がる場面の間に、複数のコマに分割されたページをはさんでいくことによって物語の展開を明確にする、マンガ的な表現が光ります。「絵本はまず、目のごちそう」という佐々木さんの言葉通り、映画のようにカットが展開する、ぜいたくな作品です。

この作品に登場するおおかみですが、1968年以降の佐々木さんの漫画作品にはたびたび登場していたキャラクターです。とはいえ、それらのおおかみは大人のおおかみ。そのおおかみが子どものころのお話が『やっぱり おおかみ』なのだそうです。ひとりぽっちの子どものおおかみですが、仲間を得るためにうさぎになったり、しかになったりすることはできません。たとえひとりぽっちだとしても、おおかみはおおかみのままで生きていくしかないのです。でもそれは悲しいことではなく、愉快ですがすがしいこと。おおかみは「やっぱり おおかみ」なのです。

いちごばたけ

同じ1973年には、わたり むつこさんと中谷千代子さんによる『いちごばたけの ちいさなおばあさん』(1973年5月号)が刊行されています。いちごが色づく様子をファンタジックに表現した物語と、繊細な絵が美しいこの作品は、40年以上たった今でも愛され続けています。

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