あの年に生まれた「こどものとも」

1960年 昔ばなし「笠地蔵」はあの絵本以外考えられない『かさじぞう』

2016-05-25 11.43.37昔話は本来、その土地の気候や風土に根づき、親や祖父母から子どもたちに口伝えで受け継がれてきたものでした。しかし1950年代後半からの産業形態や家族構成の変化もあり、身近な人からの口伝えでなく、絵本や文字の情報から初めて昔話を知る子どもたちが、増加しつつありました。それを受け、昔ばなしをテーマにした絵本が数え切れないほど出版されるようになっており、編集部は子どもたちにとっての「昔話絵本」の在り方をあらためて検討してみる必要があると考えていました。

そんな折、編集部に手紙を送ってこられたのが赤羽末吉さんでした。たまたまご家族が手にした『セロひきのゴーシュ』(こどものとも1956年5月号)の茂田井武さんの絵に感銘を受けて、福音館書店と仕事がしたいと思われたそうです。

赤羽末吉さんと実際にお会いし、赤羽さんの「雪国がかきたい」という強い思いに触れた編集者が、デビュー作に選んだのは「笠地蔵」の物語でした。再話は物語を昔ばなし独特の語り口で子どもたちに伝えることのできる、瀬田貞二さんにお願いすることになりました。

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当時すでに50歳で、知る人ぞ知る画家だった赤羽末吉さんの、雪を描くことへの思いは強いものがありました。扇面に絵を描くという、赤羽さんのアイディアについて、編集部は絵本の造形としては扇面は難しいと感じたものの、その技法を取り入れ、赤羽さんがイメージしたそのままの『かさじぞう』の絵本作りが始まりました。

赤羽さんは雪を描くことへの思いについて、中国大陸から日本へ戻ってきた際、日本の美しさの中に、湿気の美しさ、陰りの美しさがあると気づき、その日本のシメリを、『かさじぞう』で表現したかったと語っています。終戦を中国大陸で迎え、日本にもどってきた赤羽さんだからこそ感じ取ることができた、日本の風土に根づいた雪でした。そしてそれは、お話だけでなく、その昔話が育ってきた風土や歴史という遺産を絵本の中で伝えようという編集部の「昔話絵本」への思いと、ぴたりと一致しました。2016-05-25 11.44.42

1960年に、創刊から5年目を迎えた「こどものとも」では、画家の山田三郎さんによる『三びきのこぶた』、渡辺桂子さんにとって最初の作品『たろうのばけつ』、岸田衿子さん・中谷千代子さんのコンビで作られた『ジオジオのかんむり』、瀬川康男さんの『きつねのよめいり』、山本忠敬さん・小出正吾さんの『のろまなローラー』が出版され、創刊から「こどものとも」を支えた作家たちに加え、絵本作りに意欲的な新たな作家たちとの縁がつながり、絵本作りの土壌が豊かになりはじめました。2016-05-25 11.46.57

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