あの年に生まれた「こどものとも」

1964年 本当の「たからもの」ってなんだろう『そらいろのたね』

そらいろのたね

東京オリンピックが開催され、東海道新幹線が開通した1964年は、高度経済成長期のただ中で日本が大きく発展した時期でした。

その頃の「こどものとも」は、1960年代初頭からの変化の動きが落ち着いて横版28ページという形が定着し始め、ロングセラーとして今も読み継がれる作品が多く生まれました。

そんな年の1冊として取り上げるのは、『そらいろのたね』(1964年4月号)です。

この作品は、『ぐりとぐら』(1963年12月号)のカステラで子どもたちを大喜びさせた中川李枝子さんと山脇(大村)百合子さんによって、『ぐりとぐら』のわずか4カ月後に刊行されました。

そらいろのたね見開き

たからものの模型飛行機と引き換えに、きつねから「そらいろのたね」をもらった「ゆうじ」は、庭の真ん中に植えたそのたねから「そらいろのいえ」が生えてきたのを見て大喜び。少しずつ成長する「そらいろのいえ」には、森の動物や子どもたちがどんどんやってきました。ところが、お城のように立派になった家を見て「そらいろのたね」を手放したことが惜しくなったきつねは、「ぼくのうちだから」と言ってみんなを追い出してしまいます。そして「そらいろのいえ」を独り占めしようと窓とドアを閉め切ると、家は急にどんどん大きくなり始め、最後には花びらが散るように崩れて、ついにはなくなってしまったのでした。

自分がもらった「たからもの」をたいせつに育て、たくさんの動物や友だちと楽しんだ「ゆうじ」、そして一度はあげてしまった「たからもの」を取り返して独り占めしようとしたきつね。「いましめの物語」のようにも読めますが、作者の中川さんはそういうつもりで書いたわけではないと言います。「たからもの」という自分にとって大切なものをめぐって、子どもたちがどのような行動をとり、どのようなやり取りをするのか。子どもを見つめ続けてきた作者ならではの温かいまなざしでつづられた物語です。

そらいろのたねたからさがし

1964年には、同じ「ゆうじ」が主人公の『たからさがし』(1964年11月号)も登場しています。「ゆうじ」とうさぎの「ギック」は、同時に見つけた「たからもの」の棒を取り合いますが、なかなか勝負がつかないので、「ギック」のおばあちゃんに決めてもらおうと家に行くと…。分かち合う、独り占めする、取り合う、誰かにあげる。「たからもの」をめぐる子どもたちの様々なふるまいを描いた『そらいろのたね』と『たからさがし』。1964年は、『ぐりとぐら』で子どもたちの心をつかんだ中川さんと山脇さんによる作品が、連続して子どもたちに届けられた贅沢な年であったとともに、おふたりの作家としての勢いを感じることができた1年でした。

ようちゃんともぐら

また1964年は、「こどものとも」が『ようちゃんともぐら』(1964年7月号)で通算100号目を迎えた年でもありました。急速に発展し都市化が進んでいった当時の日本社会とは対照的な自然と共存する山村の生活が、石井桃子さんの文章と熊谷元一さんの絵で素朴に描かれています。

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