あの年に生まれた「こどものとも」

1959年 「子どもたちに本物を」進化する絵本づくり『きつねとねずみ』

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今はハードカバーの本として手に取ることができる『きつねとねずみ』も「こどものとも」から生まれた作品です。ロシアのシートンと言われるヴィタリー・ビアンキの物語が原作となっている本作は、19597月号(40号)として、内田莉莎子さんの訳と山田三郎さんの絵で刊行しました。

きつねのだんなはねずみを見つけて聞きました。「鼻がどろんこ、どうしたんだい?」「巣穴をつくったのさ」「なんだって巣穴を掘ったんだい?」「あんたからかくれるため」……。

後に『おおきなかぶ』の「うんとこしょ」の名翻訳を生んだ内田さんの調子のいい文章が、読み手をすぐに物語の世界に引き込んでくれます。

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子どもの興味をさらに引き付けるのが山田三郎さんの絵です。細かく描かれた、ねずみの巣穴を見てみてください。巣の奥にある寝床、そのわきにある食糧庫、逃げ道用にねずみが掘った横穴……。物語が進むにつれてだんだんと全貌がわかってくる巣穴の様子に、子どもたちは引き付けられます。山田さんは作画作業の時、線だけの版をまずつくり、後から色を指定して刷るという、当時の絵本制作ではあまり取り入れられていなかった印刷方法をとりました。本作は、戦後日本の絵本の描き方として、ちょっとした話題作になったといいます。

ところで、当時の「こどものとも」版の『きつねとねずみ』と、現在刊行している作品を並べてみると、違いにお気づきになられると思います。そうです、絵が異なるのです。画家が代わったのかと思われるかもしれませんが、山田さんから代わっていません。山田さんのさらなる挑戦の結果、1967年に絵を全部描き直した新版がハードカバーの1冊として刊行されたのです。

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1959年には、同じように、現在出版されている作品とは異なった形で刊行された作品が他にもあります。

絵本好きなら誰もが知っている『三びきのやぎのがらがらどん』も実は、「こどものとも」で一度出版されたことがありました。現在手に取ることができるのはマーシャ・ブラウン作のものですが、「こどものとも」(38号)では瀬田貞二さん訳、池田龍雄さん絵の「がらがらどん」が登場しました。やぎの名前が「がらがらどん」と訳されたのもこの時です。この38号を出した後、編集者がブラウン版「がらがらどん」を目にすることとなり、その迫力に圧倒されます。そして1965年に、「子どもたちに1番いい、どんぴしゃりのものを見せないといけない」という考えの元、単行本としてマーシャ・ブラウン版を瀬田さんの訳で刊行するのです。「こどものとも」としての刊行だけに満足せず、子どもたちに本物を、より面白いものをと、模索し続けた編集者の試行錯誤の証ともいえます。

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また、この年は『おおきなかぶ』の迫力ある画を描いた佐藤忠良さん、アンクルトリスのキャラクターデザインで知られる柳原良平さん、そして『くまの子ウーフ』の挿し絵を手がけた井上洋介さんなど、「こどものとも」の礎を築いた作家が登場した年でもありました。

5左から佐藤忠良画『やまなしもぎ』、柳原良平画『たぐぼーとの いちにち』、井上洋介画『おだんごぱん』

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